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溢れるカタカナ語・短縮語 2009年3月5日放送

 「中央公論」の3月号に「日本語は亡びるのか」という特集記事が載っています。「日本語が亡びるとき」という著書で話題となっている水村美苗女史、元東大総長の蓮實重彦氏と若手研究者・東浩紀氏の3人の論客による論説、対談で23頁に亘る特集です。

急速に進むグローバル化やネット普及による英語の地球語化、携帯電話、パソコンなどによる短縮語や略語の氾濫など、ここ15年ほどの急激な環境の変化は日本語にも大きな影響を与えているようです。

 先日、会社時代の後輩から「そろそろアラカンです」というメールが入り、何のことかと戸惑いました。「アラサー・Around 30」は婦人服の新ブランドが30歳前後の女性をターゲット層として2006年にファッション業界で生まれた造語。その後キャリアウーマンを描いた天海裕希主演のテレビドラマ「アラフォー・Around 40」へ波及し、流行語大賞を受賞しています。「アラカン」は「Around還暦」だそうで、英語のAroundを「アラ」と略し、日本語の還暦を「カン」と略して結合したわけで一般化するには無理かも知れません。一世代前の人達には「アラカン」は嵐實寿郎が頭に浮かぶことでしょう。

 日本人は短縮語を好むようで、何も今始まったことではなく、例えばサラ金や脱サラ。「脱サラ」は“安定した給与生活者を辞め自立、自営の仕事を始める”という意味が3文字で表現されています。

そもそも「サラリーマン」という表現は大正時代から使われていたそうですが、「Salaried man」という英語から出来た和製英語です。

「ドタキャン」も日常気にせずに使っていますが「土壇場のキャンセル」で日本語と英語を組み合わせた短縮語。新しくは総務省のCMにも使われている「地デジ」、短縮せずに「地上デジタルテレビ放送」と言ったら、秒を争うTVCMでは無理なのでしょうが、米寿を迎える私の母親など、何のことかと目を白黒させています。

 「アラフォー」など英語を短縮した表現は枚挙にいとまが無いほど日常の生活に溢れています。「コンビニ」は「Convenience Store」のこと、どうして頭文字を取った「CS」ではなく「コンビニ」が一般化したのか、やはり語呂が良いからでしょうか。

100年に一度という大不況で「リストラ」も最近目立ちます。

リストラは英語の「Restructuring」で、元々はゴルバチョフさんが頑張ったロシア語の「ペレストロイカ・再構築」を英語に訳した単語で、米・ロとも全く同じ意味です。再構築だから、事業を見直し拡大して人員を増やすこともあり得るわけですが、日本ではほとんどの場合、再構築・事業縮小・人員整理から「解雇」の意味に使われるのが普通となってしまいました。「私はリストラされました」というのも可笑しな話で、自身の再構築は人にされるものではなく自分自身にしか出来ないはずです。

 テレビの番組などでは、司会者やキャスターが「VTRをどうぞ!」とよく言います。VTRは「Video Tape Recorder」の頭文字で録画機そのもの、「VTRスイッチ オン!」などと叫んでいる方がむしろ正しくて「VTRをどうぞ!」では録画機を頂けるのか、と思われても仕方がないことになりかねず、使われ方も問題です。

 最近読んだある雑誌に出ていた一文。“「インターネット」の強みは「オンデマンド」「インタラクテイブ」「ニッチ」です” 英語をそのままカタカナにした単語が並んでいるだけ、これでも日本語?

 中央公論社によると2000年以降、つまり今世紀に入ってから、斉藤孝著の「声に出して読みたい日本語」、大野晋著「日本語練習帳」や藤原正彦著の「祖国とは国語」などがベストセラーとなり、国会図書館のホームページで“美しい日本語”で検索すると51冊が表示され、この内39冊はやはり2000年以降の出版、ここ10年ほどは美しい日本語論がブームになっているのだそうです。 

 文化庁の文化審議会国語分科会の答申には、これからの時代に求められる国語力は情緒力が大切で、そのために夏目漱石や嶋崎藤村などの作品への読書力の養成が必要としています。「情緒力の低下が国を滅ぼす」という藤原正彦氏の主張が背景にあるのでしょうか。

一方、中央公論の特集に登場している東浩紀氏は、日本語に限らず言語はあくまで“道具”であり、情緒よりも論理をきちんと構築できる国語力が大事で「美しい」必要はないのではと主張しています。 

以前この番組でも取り上げた、“KY 空気読めない、漢字読めない”といったローマ字略語の類は論外として、想像を絶する世界の変化のスピードとグローバル化で毎日のように発生する新語、造語、カタカナ語、短縮語などが溢れ、日本語とは何か、美しい日本語は残って行けるのかなど、深く考えさせられてしまいます。

 
 
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