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小伝馬町牢屋敷跡 2010年3月11日放送

 時代小説ブームが続いているようで、新しく始まったNHK大河ドラマ「龍馬伝」の影響もあるのでしょうか、書店の店頭に並ぶ時代物が最近さらに増えているような気もします。

地下鉄日比谷線・小伝馬町駅の近くに江戸時代の小伝馬町牢屋敷跡があり、先日、近くを通ったおり訪ねて見ました。時代小説の中には小伝馬町牢屋敷が舞台となっている傑作も多く見られます。

 生誕百年、松本清張の「無宿人別帳」の第八話「赤猫」では、明暦の江戸大火の際、牢奉行・石出帯刀が“汝らを焼くに忍びず・・火が鎮まったら、必ず下谷連慶寺に戻れ、戻った者は、この身に替えても汝らの命を助ける”と諭して囚人を一時的に釈放、一人の落ちこぼれもなく全員が戻って来たというストーリーの名作です。

 私の好きな作家の一人、藤沢周平の「獄医 立花登 手控え」は「春秋の檻・風雪の檻・愛憎の檻・人間の檻」からなる四部作で、主人公の立花登は柔術の免許皆伝、強くて優しい若き青年医師、小伝馬町牢屋敷に内科医として泊り込む身分。囚人を通して難事件を解決して行くという人情味溢れる作風に魅せられました。

藤沢周平のこのシリーズの文庫本の巻頭には、主人公・立花登が居候をし、恋人“おちえ”のいる伯父の屋敷から勤務先の牢屋敷までの道筋が記された江戸の切絵図が載せられています。

牢屋敷内部を分かりやすく示した「時代風俗考証事典」から引用したという「小伝馬町牢獄概見図」も記されていて興味を引きます。

 約2,700坪の敷地は、東牢と西牢に大きく分けられ、身分によって収容される牢獄が区別されていました。5百石以上の旗本が入る「揚がり座敷」、御家人、大名の家来、僧侶、医者などの「揚がり屋」、一般庶民向けの「大牢」、無宿人を収容する「二間牢」や「百姓牢」、女性用の「女牢」と複雑だったようです。

延宝5年(1677年)に造営、明治8年(1875年)市ケ谷に出来た監獄に移されるまでのほぼ200年使われていたのですが、今はその面影もなく、跡地は「十思公園」と「大安楽寺」になっています。

牢屋敷には処刑場も併設され、200年間、毎年100人を越えて処刑が執行されたとされ、合図に鳴らされていたという「時の鐘」が十思公園に残されています。今は林立するビル群に遮られてしまいますが、江戸のころには「時の鐘」の音は、当時一番の繁華街だった日本橋界隈はもとより、東は隅田川、西は麹町、南は浜松町、北は本郷の辺りまで聞こえたそうで、江戸の人々はどんな気持ちで処刑の鐘の音を聞いていたのでしょうか。

十思公園には、ここで処刑された「龍馬伝」の主要人物の一人、吉田松陰の「松蔭先生終焉乃地」と記された碑と、辞世の句の刻まれた石碑があります。松蔭の外、橋本左内など50人に及ぶ幕末の志士達が安政の大獄で捕縛され、この地で処刑されています。

 大安楽寺のお坊さんの話によると、市ケ谷監獄へ移転後の牢屋敷跡は永い間荒野原となり、夜ごと青白く燐の燃える様子が無気味だったとか。この刑場で露と消えて行った多くの魂を鎮めるため、明治15年にお寺が建立されました。これが大安楽寺です。

寄進者の中心となったのが明治の財界の大物、大倉財閥の創始者・大倉喜八郎と安田財閥の祖・安田善次郎で、二人の名前、大倉の「大」と安田の「安」をつけて「大安楽寺」となったという説明でした。宗派は高野山真言宗、本尊は十一面観世音で江戸三十三観音の第五番札所となっています。

 小伝馬町牢屋敷の収容人員は300400人だったそうです。日本最大の東京・府中刑務所は定員2,842人、江戸の人口は定かではありませんが、犯罪者の比率は昔も今も変わらないのでしょうか。

裁判で刑が確定する前の東京拘置所の定員は3,010人であり、小伝馬町牢屋敷はこの両方を兼ねていたわけで、明確に調べたわけではないが、現在の犯罪者の方が多いのでは・・という気がします。 

 ちなみに、最近の新聞記事によれば、日本全国の刑務所は77ヵ所、拘置所は111ヵ所あり、昨年末時点で刑務所64,461人、拘置所には10,789人、合わせて75,250人・・改めてその多さに驚きます。

 昨年までの10年間の日本での死刑執行は46人でした。真実のほどは分かりませんが、牢屋敷で1年に100人も処刑されたとすると、これに武士の切腹、各藩での処刑者を考えると、当時の人口からはとてつもない多さの処刑者数だったことになります。

八代将軍・吉宗の頃に定められた死刑は、火刑、いずれも斬首刑の獄門、死罪そして切腹の4種類、いずれも過酷で当時の人の命の軽さに戦慄さえ覚えます。大安楽寺に向って思わず合掌でした。

 
 
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