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霧笛が消えた日 2010年4月15日放送

 「霧笛」という言葉の持つ響きには、何か遠い昔の茫洋としたノスタルジックなイメージが湧きますが、最近はほとんど使われず知らない若い人たちも多いかも知れません。

濃霧などで視界が1海里(約1.9キロ)以下になると鳴らされる、「ボオ―ツ」という心の奥に染み入るような重低温の霧笛。通りかかる船舶に霧信号所・灯台の方位を知らせる役割も、灯台の無人化が進み、船舶レーダーの進歩やGPS(全地球測位システム)の採用などによりその役目を終える運命となりました。

去る331日は、最後まで残されていた納沙布岬灯台や小樽市の日和山灯台など北海道の4カ所の霧信号所の霧笛に終止符が打たれ、日本全国の霧笛が全て消えた日となりました。

本州の最東端にある千葉県銚子市。犬吠埼灯台も銚子の名所の一つ、ここの「霧笛」が廃止されたのは2年前の2008331日でした。この灯台へは何度か訪れたのですが、残念ながら隣接する霧信号所はカマボコ屋根の外観だけしか見ていません。

 犬吠埼の霧笛は日本に現存する唯一のエア・サイレン式という貴重なものだそうで、まずコンプレッサーで圧縮空気を作り、一旦これを数基の大型タンクに蓄えておき、指示によって30秒間隔で5秒間、勢いよくサイレンに圧縮空気を送り込み、屋上に突き出た巨大なラッパから霧深い海に向けて大音響を放つという仕組みです。

コンプレッサーは普段は電動モーター、停電など非常時に備えて燃料エンジンも用意されているそうです。

 犬吠埼灯台は英国人R. H. Bruntonの設計で明治初年に造られました。霧笛を発する霧信号所が稼動を始めたのは明治43年(1910だそうで、以来ほぼ100年間、霧の太平洋に向って霧笛を響かせて来たことになります。

 経営に行き詰まった「銚子電鉄」を、名物となった濡れ煎餅を売ってでも街ぐるみで復活させようという話に興味があって、20082月のこの番組で「濡れ煎餅で復活 銚子電鉄」というタイトルで取り上げました。銚子の街にはこういった風潮があるのか、灯台の設計者Bruntonの名を取って「犬吠埼ブラントン会」が結成され、市民が中心となってさまざまな活動を続けています。

犬吠埼霧信号所の建物は明治の面影を残すような全鉄製のカマボコ型。エア・サイレン式機械装置やカマボコ霧笛舎について専門家による学術調査を実施、後世に残そうという運動もその一つです。

「失われた霧笛の音」を保存しようという活動も行われ、ブラントン会の名前でCDが販売されています。「犬吠埼灯台の霧笛〜失われたサウンド〜」というCDには、灯台近くの君ヶ浜の磯で聞こえる霧笛、灯台の崖の下にある名所・帆立岩での打ち寄せる波の音と霧笛の合奏、巨大なラッパのすぐ側で録音された霧笛、停止直前の2008329日に録音された最後の霧笛などが収録されています。  銚子名物となった銚子電鉄の通過音や銚子川口大潮祭、銚子みなとまつり花火大会など地元銚子を象徴する音も同じCDに収録されています。CDは2,000円で灯台の売店や近くのお店で販売、ネットによる通販もあり、このCD販売による収益金の一部は霧笛の学術調査などの費用に充てられているそうです。

 「霧笛」と言えば、撮影所内の事故により21歳の若さでこの世を去った赤木圭一郎の昭和35年頃のヒット曲 「霧笛が俺を呼んでいる」が想い出されます。何となく哀愁のこもった「霧笛」という言葉から、歌謡曲など歌や映画の題名にも多く使われていると思って調べて見たのですが、意外と少ないのに驚いています。

 古くは昭和38年、こまどり姉妹の「霧笛の街」、最近では音羽しのぶの「最終霧笛」、水田かおりの「東京霧笛」や氷川きよしの「霧笛の波止場」など数えるほどしかありません。文学、小説の分野でも、歌にもなりCDも出ている浅田次郎の「霧笛荘夜話」、明治初期の横浜新開地を舞台にした大仏次郎の「霧笛」など、少ないのです。

 「霧笛」と言えばやはり港町横浜。「港の見える丘公園」の中にあって大仏次郎記念館と神奈川近代文学館を結ぶ51mの歩道橋は「霧笛橋」と名付けられ、かながわの橋100選の一つだそうです。

 横浜元町には大仏次郎の小説から名前を付けたというフランス料理店「霧笛楼」があります。明治の開港時代を偲ばせる雰囲気を漂わせるというのが売り文句、一度訪ねたいと思っています。

 宇宙の遥か彼方に日本人二人の男女宇宙飛行士が長期滞在するというとんでもない時代に、役目を終えて消えてしまった霧笛、「霧笛は遠くなりにけり・・」というところでしょうか。

 
 
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