Home > People > The Stream > 楊枝ひとすじ300年

楊枝ひとすじ300年 2010年4月29日放送

 先週は、開店早々の“弁護士バー”の話題でしたが、今日は一転、創業300年を超える伝統とのれんの老舗「さるや」をご紹介します。

 3月初めのこの番組で「東都のれん会」を取り上げました。「三代100年同業で継続し、現在も盛業を続けていること」という厳しい会則を満たす老舗53軒が加盟しています。

のれん会に興味を持つ友人が、会員の「駒形どぜう」が発行している小冊子「どぜう往来―2009年冬号」を送ってくれました。

ここに紹介されていたのが、楊枝ひとすじに300年という「さるや」代表取締役会長の山本貞治さんと「駒形どぜう」六代目当主・渡辺孝之さんの対談、実に趣があって今日の話題提供となりました。

 「さるや」の創業は宝永元年(1704年)、江戸時代から300年も続く楊枝の専門店で、まさに歴史と伝統の老舗です。

“楊枝”に、何故“さるや”という店名なのか、山本会長の語るところによると命名には二説があるのだそうです。

一説は元禄時代の文献に「猿は歯が白き故に楊枝の看板たり」という文句があり、ここから付けたという説。もう一つは、さるやの主人が小猿を背に乗せて、楊枝の材料である「黒文字」という木を大道で削って見せたところからという説だそうです。

 人類で楊枝を初めて使ったのは、およそ10万年前のネアンデルタール人、発見された歯の化石に、固い楊枝でこすったと推測される縦の筋があることから証明されているのだそうです。

紀元前500年頃、お釈迦さまは木の枝の端を噛んでブラシ状にした歯木(しぼく)を使って、歯を清潔に保つよう教えていたと伝えられています。仏法では食後に水を口に含んで三度回転させ、そのあと楊枝で歯を清潔に保つことが大切な作法とされていて、これが楊枝の起源という説もあるようです。

初めて知った楊枝の長い歴史と深さに正直のところ驚かされました。

 それにしても楊枝だけで江戸時代から300年も続いているのには感嘆せざるを得ません。一般に広く使われている楊枝は、柔らかくて比較的安価なシラカバや合成樹脂を材料とした大量生産品なのに対し、「さるや」では古来より上等とされている黒文字の樹だけが使われているそうです。

余談ですが、韓国では1992年から楊枝の使い捨てが禁止され、トウモロコシの澱粉を原料にして食用にもなり、残飯に混じっても家畜飼料として使えるとか、エコ時代の影響でしょうか。

 黒文字は北海道から九州まで全国の低い山に分布、北の方の木は固くて割りにくいので、「さるや」では主に四国、九州産が使われています。今でも、すべて手作りで熟練した職人でも12,000本程度しか作れない高級品。黒文字は一本、一本手作りすることで芳香が醸し出されるのだそうです。

 黒文字の若木を2つに割り、4つに割りさらに細かく割って、昔ながらの切り出しナイフで細く、細く削る・・まさに職人芸です。

 私達が日常使う500本で100円程度の大量生産の楊枝と違って、高級和菓子用や桐箱に入った贈答用として製造販売されています。

「さるや」の宣伝文句は“たかが楊枝というなかれ、真の楊枝は至難の名人芸。日本が世界に誇り得る「粋」と「実用」の象徴”というもので、歴史と伝統に裏打ちされた老舗の誇りを感じます。

 “金千両”と、当主が一個一個手書きした桐箱入りの楊枝は「千両箱」という商品名で、サイズによって7種類あり、一番大きな極大型千両箱は黒文字楊枝400本入りで2,625円。最も小型の極小型千両箱は50本入りで630円、いずれにしても高価な楊枝です。

千両箱がお正月に届けば“こいつは春から縁起がいいや”という江戸っ子弁が聞こえるようで、年賀用としても評判が良いそうです。

 干支の絵入りの桐箱や、還暦、喜寿、米寿などのお祝い用の紙箱入り楊枝、「撒物(まきもの)」として邦楽や日本舞踊のおさらい用にちりめんで作られた楊枝入れがついたセット、鰻や扇子、竹ふしなどの形をした細工楊枝、都々逸入りの辻占いで巻いた楊枝など、かなり幅広い商品が揃えられています。

 楊枝は江戸時代には主に小間物屋(化粧道具などを売る店)や楊枝専門店の店先で作られ、売られていたようで、歌麿の浮世絵などにも描かれています。江戸時代の最盛期には浅草寺境内だけでも250軒もあったと言われる楊枝屋も、今は「さるや」のほかはほとんど見られません。 日本橋小網町に本店を構える「さるや」、 一口に300年の歴史と言っても、気の遠くなるような時の経過、この先も永く伝統とのれんは続いて行くのでしょうか。

 
 
リンク
 
当サイトをご覧になるにはFLASHプレーヤープラグインをインストールする必要があります。
Get FLASH PLAYER
▲ページトップへ
 
ギャラリーウォーク 〒357-0041 埼玉県飯能市美杉台4-14-16 KDC内  TEL/FAX:042-971-3120         Last Update 2009/01/27
Copyright © 2009 KDC CO., LTD All Rights Reserved.