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アメリカに納豆を売り込む男 2010年7月1日放送

 総務省の家計調査によると、昨年2009年の1世帯当りの醤油の年間購入量は年々減少の傾向もあって7リットル、25年前の1986年の14リットルに比べ半分になったそうです。核家族化で家族人員が減っていることや、便利な「たれ」や「つゆ」の消費量が増えていること、食生活の多様化、減塩などが原因だと言われています。

 一方、日本醤油協会の推定によると、国内需要が減っているのに対し、日本の醤油メーカーの米国、中国、東南アジアなど海外での年間生産量は現在約20万キロリットル、これは35年前、1975年の生産量8千キロリットルの25倍という驚異的な伸びを示し、さらに今後も増加傾向にあるとしています。

 35年前と言えば私が米国シカゴに駐在していた頃。ある日アイルランド系の米国人夫婦を日本料理店での夕食に招待したのですが、

 彼等にとって醸造食品である醤油の香りは生まれて初めての体験、どうにも好きになれず、洋服にまで染み付いた醤油のニオイが1週間経っても消えず、大分恨まれました。醤油は異文化だったのです。

 ちょうどこの頃、キッコマンの初の海外工場がシカゴにも近いウィスコンシン州に完成し、あの懐かしい醤油ビンがスーパーにちらほら展示されるようになった時期と重なります。今では、米国のほとんどの主要都市には寿司レストランがあり、醤油の味も香りも当然のようにアメリカ人の生活に溶け込んでいて、35年間25倍の海外生産量の伸びにも納得、醤油は世界の調味料になったと言えます。

 710日は語呂合わせで「納豆の日」だそうです。同じ大豆を原料とする発酵食品の納豆ですが、35年間で異文化的なものから、世界の調味料となった醤油と違って、「納豆が好きだ」という欧米人には今までお目にかかったことがありません。

 あのネバネバした食感と独特な匂いでは好きになれないのも無理からぬというような気がします。

 ところが先日ある雑誌に、納豆を自らアメリカで製造し、今まで納豆を食べたことも無いアメリカ人向けに本格的な市場参入を目指している企業家がいるという記事が出ていて驚きました。
 サンフランシスコから北へ80キロほどにあるセバストポールという町で「ジャパン・トラデイッショナル・フーズ(JTF)」という会社を設立、手作り納豆の製造・販売をする佐藤南さん(53才)がその人。東京生まれの東京育ち、慶大卒業後アリゾナ州立大学でMBA(経営学修士)を取得、外資系企業への勤務、日本食材の海外市場への販売をサポートするコンサルタント業などを経て、こだわりの納豆造りで知られている「矢口納豆製造所」を買収、納豆造りに関わるようになったのだそうです。

 もともとアメリカにはチリビーンズやポークビーンズ、ビーンサラダ、ビーンスープなど豆を使った料理は多く、豆はごく一般的な食材、最近では健康指向や日本食ブームから豆腐も人気食品、おつまみの枝豆も「Edamame」として英語辞典にも載っているほどです。

 ご存知のように納豆は特定保健用食品として認可されています。

 貴重な植物性タンパク源であり、豊富に含まれる食物繊維や納豆菌は腸内環境を整えるのに有用、ナットウキナーゼとして知られる酵素は血栓を溶かす効果があるとされ、骨蛋白質の働きや骨の形成を促進するヴィタミンK2も豊富に含まれる・・など、いいこと尽くめの納豆です。私も週に23回、朝食に納豆は定番です。

 肥満はアメリカでも大きな社会問題の一つ、現在、国民の6割が肥満または一歩手前という肥満大国です。根強い健康指向もあり、いずれ納豆も健康食品として大いに注目されるはず、アメリカ人の納豆嫌いは“喰わず嫌い”に違いないと佐藤南さんは確信していると語っています。
 アメリカ人向けに発売された納豆は幾つかの工夫がされています。受け入れられ易いように大粒の大豆を使用、あえて浅めの醗酵で納豆独特の臭いを出来るだけ押さえたこと、日本風の食べ方だけに固執しないようにタレとカラシは付けず、かわりにマヨネーズやオリーブオイル、ドレッシングなど味付けに適した食材やトッピングなどの簡単なレシピカードを付けています。商品名は「MegumiNATTO」、パッケージなどには日本語は一切使われていません。

 この商品は今年の4月に世界的にも厳しい基準設定と言われる米国農務省(USDA)のオーガニック食品の認定を取得、まだまだ小規模ですが、今後の本格的な売上伸長が期待できそうです。
 納豆の日、欧米人には難しいと思われていた日本独特の健康食品・納豆を売り込む起業家精神と挑戦に敬意を表したいと思います。

 
 
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